『 おぐま珈琲店 』


 以前、高崎の連雀町に「ばんどう珈琲店」という喫茶店がありました。昨今、珈琲店なんていうと、たとえ初めてでも、やたら馴れ馴れしく「いらっしゃいませ〜ぇ、こんにちわ〜ぁ…」とか…で、格好つけたバイトの子がマニアル1時間で覚えたような、それなり〜ぃの珈琲がほとんどだ。でも、ここは違っていた。珈琲は神戸「萩原珈琲」の炭火焙煎の豆使用。雰囲気はやはり神戸「茜屋」をそのまんま真似。目の前で丁寧にドリップで一杯ずつ入れてくれる珈琲は、なんとなく気品さえ感じられた。流れる音楽はバロック…ヴィヴァルディーやバッハ、子供が吹奏楽部にでも入ってて、無理矢理チケットを買わされでもしない限り、決して聞く事のない旋律は、ボ〜ゥっと考え事するのにはとても心良いものでありました。
 で、当時、その「ばんどう珈琲店」に、遠く越後の国長岡より修行に来ていた兄弟がおりました。特にお兄ちゃんの方は結構気さくに話をしたりして、いよいよお店を出すって時、招待状(珈琲券)まで頂いちゃいました。でも、わざわざ珈琲を飲みに行くのに、長岡はちと遠かった。ついでの用事も無かった。結局、行く事は無かった。そして何年かが過ぎ「ばんどう珈琲店」はほどなく閉店。「おぐま珈琲店」は如何に…えっ?!まだやってる!。じゃ、行ってみようか〜ぁ…って感じで、鳥海の帰り、どうせ下道で長岡通るんだから寄ってみました。
 いや〜ぁ、嬉しいな〜ぁ。「ばんどう珈琲店」そのまんま、珈琲も同じ、器も、音楽も、違うって言えばLPがCDになってるって事と、店の名前だけだった。マスター居なかったけど、美味しい珈琲ほんとうにご馳走様でした。「ばんどう珈琲店」が閉店してもう何年になるんだろう?定かではないが「おぐま珈琲店」は開店して何年になるんですか?…えっ!26年!。そ、そんなに!。
 なにやらとっても古いお話でありました。


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