まだ一度も踏まられていない北向きの斜面。2人のテレマーカーを待つかのように動く始めるリフト。2日前に降った雪ですでに積雪量を判断する事は出来ない。傾斜線に向かいスキーを立て、大きく深呼吸する。そして相棒に「行くよ」という旨の合図をしたのち、目の前の違う世界へと飛び込む。沈み込む体、浮き上がる板、舞いあげた雪粉は肩筋を超えていった。
ツアーがいい。たとえ、こんなパウダーに偶然にでも巡り逢えたとしても、所詮、機械頼りの物臭遊び。2〜3回も滑れば飽きる。たとえ、激重ラッセルを強いられたとしても、そこには自然に対峙する自分がある。たとえ、深い薮に道を遮られたとしても、自然の生命、獣達の彷徨を感じる事ができる。たとえ、陽に置き去られ暗闇に迷ったとしても、そこでしか見えない雪達の輝きを見つける事ができる。ほとんど滑る事無く帰って来ても、荷を解き、シールを乾かし、今日のツアーを顧みる。そして、また明日のツアーを想う。それがいい。 |